避難者訴訟 第14回口頭弁論サマリー 
 
 

福島原発避難者訴訟:第14回口頭弁論、福島地裁いわき支部において開催

14回口頭弁論:12月9日(水)10:00から

同時開催:第14回口頭弁論の説明会:八幡神社会館において
(福島県いわき市
平字八幡小路66-9 広田法律事務所の隣において)


2015年12月9日

福島原発被害弁護団  共同代表 弁護士 小野寺 利 孝

共同代表 弁護士 鈴 木 堯 博

共同代表 弁護士 広 田 次 男

 

<本日の口頭弁論に関する問い合わせ先>

弁護士 笹山尚人(ささやまなおと) 080−1343−2615 

 
 第1 訴訟そのものの概要

 1 当事者

原告 早川篤雄 外38名(第1次提訴分)+國分富夫 外177名(第2次提訴分)+菅野清一 外136名(第3次提訴分)+渡辺茂男 外118名(第4次提訴分)+110名(第5次提訴分) 合計586名

被告 東京電力株式会社

 
 (1)当事者

原告: ・189世帯(17世帯+64世帯+35世帯+35世帯+38世帯)

・年齢層:0歳から92歳まで

  いずれも,福島原発事故当時,避難区域である双葉町,楢葉町,広野町,南相馬市、川俣町(山木屋地区)などに居住していた住民であり,現在もいわき市のほか福島県内外において避難生活を強いられている。

原告代理人:弁護士 小野寺利孝,同 広田次男,同鈴木堯博、同 米倉勉ほか福島原発被害弁護団

被  告:東京電力株式会社

(2)請求額

 被告が,原告らが福島原発事故によって被った被害として,合計金278億2091万3632円の賠償金の支払いをせよ。

※ 原告の多くは,東京電力に対する直接請求・集団交渉等を通じて,合意に至らなかった部分を請求している。

※ 賠償請求の内容については後述。

  2 請求内容
 
(1)基本的な考え方[生活再建,再出発に必要な賠償を!]

 一人ひとりの被害者が地域コミュニティから無理やりひきはがされ,人間同士の関係性を断ち切られて孤立し,従来の人間らしい生活とその基盤を根こそぎ奪われ,今後どこに定着して生活したらいいのかの見通しもつかないこと,すなわち全人格的被害を受けている。

 本件事故は公害であり,加害者と被害者は非互換的で,加害行為には利潤性がある。

 そのうえで,広範囲の地域において継続的かつ全面的・深刻な被害を引き起こしている。しかも,本件事故による被侵害法益は,人格発達権や平穏生活権であり,これまでの差額説的な考え方で扱われるものではなく,このような権利を充足していた社会的諸条件の効用の回復にこそ損害賠償の目的は据えられるべきである。

→生活再建,再出発を行なうために必要な賠償,原状回復が図られるべきである。

ただし、本件は、訴訟提起以来、時間が経過し、被害者の救済は待ったなしの状況である。一刻も早い被害者の権利の実現のため、請求項目は、最終的に、自宅不動産、家財、慰謝料に絞っている。

(2)損害賠償請求の項目

@ 財物賠償

 警戒区域及び計画的避難区域として指定された地域,またそれに準じる地域については政府による区域の変更,立ち入り制限の程度に拘わらず,向こう5年間以上の間は生活基盤としての価値を全面的に喪失した。→時価ではなく,再取得価格の請求。

[土地]

 500u未満の場合、避難前の宅地面積×福島県都市部の平均宅地単価(38000円)または、13688000円(フラット35)のうち、いずれか大きい方。

 500u以上の場合、500u×福島県都市部の平均宅地単価(3万8000円)+(従前の宅地面積−500u)×(1u当たりの固定資産税評価額×1.43)の式によって得られる額

[建物]

フラット35(2238万円)+(従前の床面積−115.3u)×平成23年度の平均新築単価(15万8800円)の式によって得られる額。

[家財]

    損害保険の内容を参考に、家族構成ごとによって算定される賠償額。

A 避難に伴う慰謝料

 避難生活が終了するまで,一人につき月額50万円を請求する。

B ふるさとを喪失したことに対する慰謝料

 かつての自宅,また自宅のあった地域社会そのものを喪失したことに対する慰謝料として,一人につき,金2000万円を請求する。

 

第2 第14回口頭弁論の概要

 1 訴訟の流れと第14回口頭弁論

   訴訟は、大まかに言って、3段階に分かれます。

   第1段階:お互いの言い分の応酬。訴訟でもっとも時間をとる部分。

   第2段階:証人尋問などの立証。

   第3段階:証人尋問を踏まえた、言い分のまとめの陳述と判決。

   第14回口頭弁論は、この第2段階の4回目になります。

  第回口頭弁論では、原告、被告双方が、その言い分を、「訴状」(原告側)と、「答弁書」(被告側)という書面を提出し合って応酬しあいました。そこで、被告の「答弁書」に対して原告側の反論が求められます。

  第回口頭弁論以降、原告側から反論となる書面(準備書面)を提出し、被告東電も反論を提出してきました。

  同時に、第回の法廷以降、原告側は、立証についての考え方を提出し、立証の日程についても提起してきました。第回口頭弁論では、原告側の主張として、代表的な個別の原告の損害について主張し、第2段階の立証についていかなる審理をすべきかについても主張しました。

第9回口頭弁論では、裁判所は尋問を実施しませんでしたが、5月12日の進行協議を踏まえ、第11回口頭弁論以降、帰還困難区域からの避難住民から本人尋問を実施することになりました。これまで第11回口頭弁論から第13回口頭弁論までの3回の弁論の機会で、合計9名の原告の貴重な話をうかがってきました。

今回は、楢葉町から避難しているみなさんの尋問を初めて行います。

 ご承知のとおり、楢葉町は、避難指示が解除されました。こうした解除地域の原告の被害をどのように伝えるのかが、今回の立証の課題です。

 2 第14回口頭弁論全体の流れ

  尋問とは、質疑応答を通じ、証明したい事実を明らかにする手続きです。

一人の証人や原告本人に対し、主尋問・反対尋問・補充尋問の順番で質疑応答がされます。具体的には、弁護士や裁判官から証人、本人に対し質問し、それに証人、本人が回答するということになります。

それぞれの内容は次のとおり。

・主尋問…事実を証明したい側から聞く尋問。今回の場合、こちらの担当弁護士から聞く質疑応答です。今回80分を予定。

・反対尋問…主尋問を攻撃するために行う尋問。今回の場合、東電の弁護士から聞く質疑応答です。今回15分を予定。

・補充尋問…主尋問、反対尋問を補充する角度から、裁判官が行う尋問。今回15分を予定。

  遠藤庄作さん(担当弁護士、米倉勉)、渡邉幸二さん(担当弁護士、高橋力)、成澤広子さん (担当弁護士、深井剛志)について行います。

10時開始で、遠藤さんの尋問終了が午前11時半ころ。

終了後から、進行協議期日が行われます。これは次回以降の裁判のスケジュールを検討するもので、代表の原告の方にはご参加いただきますが、そのほかの原告のみなさんは、社務所に移動を待機をお願いいたします。

13時30分、渡邉さんの尋問を開始。休憩をはさみ、成澤さんの尋問にを行います。終了は16時半ころではないかと考えられます

 3 第15回法廷

  201617日(水)午前10時開始を予定しています。

  引き続き原告本人尋問を行う予定です。

                              以 上